ツルの一声

2014年9月

◆東日本大震災の教訓を生かせ!

 8月、広島市で悲惨な災害が発生した。土砂災害である。被災から1週間後、死者の最も多かった広島市安佐南区にあるスイミング・スポーツクラブをチェックした。民間プール事業所は4ヶ所あった。だが、いずれにも土砂災害に関する表現が無かった。ブログを覘いても同じ。そればかりか「秋の入会キャンペーン」を始めたクラブがあった。正直、同じ地区で死者が多数出ている時に、「入会キャンペーン」は無いだろうに…というのが率直な感想である。

 被災者が公共施設や学校に避難していた人数は一時1500人もあった。被災1週間後には医師団が避難所を訪れ、医療活動がはじまった。被災後、雨天続きだったために避難所生活はさぞかし苦痛だったに違いない。

 規模は違うが同じ光景だったのが、あの3年半前の東日本大震災の被災地だ。東日本大震災に見舞われた地域は営業活動の出来る環境ではなかったが、使える施設と人はフル稼働したことを思い起こしてほしい。スイミングクラブとして役割がたくさんあったのだ。その一つを紹介しよう。スポーツアカデミー相馬は地震で施設がやられた。灯油が入ったボイラーはバルブが壊れた。スタッフがそれを抜き取り、避難所、医療機関へ提供したいと自治体へ申し出た。幸い自治体には灯油の備蓄があったため、一般家庭で灯油を必要としている人達に無料で配布する。施設の破損状況から、当分の間は営業どころではないから、灯油は地域支援に使った。東京の本社から被災2日後には救援物資が届けられた。本社社員が持ち寄った生活用品・食料などだ。アクセスが分断され、商店の棚から商品消えたが、それをスタッフ以外の人達にも差し上げた。赤子を抱えたお母さんには、水はありがたがられたという。

 アカデミー相馬が取り組んだ一つに、避難所での高齢者の体操があった。避難所では運動不足になる。お年寄りに声をかけて体操をさせた。さらに子供達はスクールバスに積んでクラブへ運び、体操をさせる。こうした献身的な活動に市はスクールバスのガソリンを提供してくれた。クラブのシャワーを使ってもらい、プールの水を家のトイレを流すために使ってもらった。

 こうした地域貢献の姿は、見る人は見ていた。施設の営業がいつ再開されるかも分からない状態にもかかわらず、一人の入会予約があった。「献身的なスタッフの働きを見て感動した」からというのが入会動機だった。以来、アカデミー相馬は地域の信頼を得て、大きく変わった。その後、市長が交代し、所長が「ご挨拶に伺いたい」との申し出に、市長の方から挨拶をしに来てくれた。教育委員会の対応も様変わりした。市内小学校の水泳授業は一切を任されるようになった。南相馬市にあったルネサンス原町が営業を休止した後、市民から「泳ぐ場所が欲しい」と署名活動が起こり、市にルネサンス原町の施設を無償提供された際には、アカデミー相馬の所長は第三セクターの一員として迎えられるということもあった。その所長は今年の福島県総合体育大会で子供たちの体力低下防止、高齢者健康づくりに寄与したことが評価されて「功労賞」を授与された。

 こうした被災があれば、スイミング施設・スタッフは大きな地域貢献ができるということだ。知恵を絞り合えば、何が地域貢献かは出てくるはず!それを実践したスポーツアカデミー相馬は、当然のことながら大震災前の会員数を大きく上回り、売上も結果として大きく伸ばした。地域との絆が出来たということなのだ。ひたすら自分たちができる地域貢献を考え、実践したために、現在では地域に必要不可欠の存在となっている。被災時こそ「傍観者になるな!」と訴えたい。その意識を持っていないと、すぐ近くで悲惨な人たちが出ているのに「入会キャンペーン」という発想になる。いつ起こるか分からない災害時に備えて、東日本大震災の教訓を生かせ!と訴えたい。